脂肪肝とは肝臓内に中性脂肪が過剰に蓄積されている状態です。原因は過栄養、アルコール、糖尿病が3大病因と言われています。特にアルコールを過度に摂取する方は、肝臓に脂肪が沈着するのみならず、肝臓の細胞が壊れて炎症をきたし、その結果 、線維化がおこって肝硬変に進展しまうことがあります。これは以前より「脂肪性肝炎」「アルコール性肝炎」と呼ばれ、その病態の進展には飲酒が大きな要因と考えられています。
  一方、飲酒習慣のない方の脂肪肝については、これまで医者も患者さんも単に肝臓に脂肪が貯まっただけで可逆性のものであり、予後は良好だと考えていました。ところが、最近になって糖尿病、高脂血症、高血圧、肥満などの生活習慣病を持った方の脂肪肝の中には「脂肪性肝炎」「アルコール性肝炎」と同じような組織変化、つまり炎症や線維化をきたし、肝硬変、さらには肝癌の発症までにいたる病態があることがわかってきました。1980年に米国メイヨークリニックのLudwig(ルードウィヒ)という医学者がこうした脂肪肝に対して「非アルコール性脂肪性肝炎」nonalcoholic steatohepatitis (NASH=ナッシュ) という名称をつけたのです。
  米国ではすでに成人の3〜5%がNASHに罹患し、10年で2割が肝硬変に進展していると言われています。国内の学会、研究会でもNASHに発生した肝癌はトピックで報告が増加しています。
 さあ、大変!これまでただの太り過ぎと思っていた人が一転、肝硬変、肝癌予備軍とされてしまったわけです。また、見た目はそんなに太っていなくても内臓脂肪型で高脂血症や糖尿病がある人はNASHの危険性があるので注意が必要とも言われています。NASHの発症メカニズムとしては、先行して発症した脂肪肝に、酸化ストレスなどの要因が加わって脂肪性肝炎に進展すると考えられています。酸化ストレスとは生体の内因性あるいは外因性の原因により生じる活性酸素を生体が十分処理することができなくなるために生じるものです。
 NASHの治療はまず、先行している脂肪肝を改善させることです。特に肥満はインスリンの感受性を低下させ、生活習慣病の元凶と目されていますから食事療法、運動療法で太り過ぎを解消させましょう。ただ、急激に減量 すると末梢の脂肪組織から肝臓への脂肪蓄積を逆に促進させてしまう場合があるので注意が必要です。また、酸化ストレスを抑止するとされる緑黄色野菜や海藻類を多く摂取するように心がけましょう。
 病状によってはお薬の手助けが必要な場合もあります。もう、「ただの脂肪肝」と放っておくことは出来ません。